2009年11月23日月曜日

都営線の地下鉄

都営線の地下鉄に乗っていたときの事。

空いている時間だけど席はほぼ埋まっていて、自分を含めてちらほら立つ人が出始めてたぐらい。
俺が立っているドアの反対側のシートの端っこには、いかにもDQNな17~8の若い男が
だらしなく座ってゲームに興じていた。
プリント柄が入った上下揃いのジャージに、ぶっとい金チェーンのブレスとネックレスっていう、
まさに絵に描いたようなDQNスタイル。周囲の目なんかお構いなしで、
一心不乱にPSPに没頭している姿が、いかにも不愉快な感じだった。

二駅ほど過ぎた時、スーパーの買い物袋を下げて、白い杖をもった年配の女性が一人で乗ってきた。
顔つきを見れば、そのおばあさんが極端な弱視だってことは瞬時に分かった。
だけど、つり革に捉まって立っていた自分は、譲ってあげられる席がないので、
どうしていいか分からずにその人を目で追うだけだった。

そのおばあさんが例のDQNの前を通りすぎようとしたとき、何気に目を上げたDQNは
おばあさんの姿を見た瞬間、驚いた事にいきなりおばあさんの腕を掴んだ。
おばあさんも吃驚して立ち止まり、よく見えない目で自分に何が起こったのか確かめようとしている。

それを見ていた俺は、「うわぁこのDQNが何するつもりだ!」って驚いたけど、
次の瞬間、そのDQNボーイはすっと脇によけつつ席を立つと、おばあさんの腕を静かに支えながら、
空けた席にゆっくり座らせてしまった。

流れるような美しい動作だった。

いつも、人に席を譲ったり足の弱い人を支えたりとかを習慣的にやってる人じゃなければ、
あんな美しくスムーズな動作は出来ないと思う。

DQN(と俺が勝手にレッテルを貼っていた)若者は礼を言うおばあさんへの返事もそこそこに、
空いているドア脇の空間に移動すると、そこでまただらしなく寄り掛かって何事も無かったように
ゲームを続けていた。

俺は心の中で敬礼したよ。
人の心の美しさは、浸っている文化で決まるもんじゃないな。
レッテルを貼ってた自分を反省したし、そういうシーンを見せて貰えた事に感謝した。
まだまだいけるよ、この国は。



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